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『「私の娘は殺されました。犯人はこのクラスにいます。」
女教師の告白。破滅。そして復讐』


kokuhaku
監督:中島哲也(嫌われ松子の一生

あらすじ
 終業式が行われた3月。1年のクラス担任は「私の娘は事故死
ではなくこのクラスの生徒に殺された」と衝撃の告白をする。
そして自ら犯人たちに制裁を加えたと、そういい残し姿を消す。

 4月になり新しい担任のもと明るいクラスに戻ったかにみえたが
犯人Aは登校し続け、犯人Bは引きこもりになっていた。罪の
意識を感じさせないまま登校するAにクラスメートから陰惨な
いじめが始まる。


ブルーな色味を持ったこの映画は今までの中島監督作のカラフルで
ポップな色彩とは全く異なっている。

このブルーで色を感じさせない世界というのが娘を殺されて
ぽっかり心に穴の空いてしまった森口先生の虚しい世界を
表しているのだろう。そして、衝撃の告白を淡々と抑揚の
ない語り口でする彼女は冷たい氷の女と化していた。

終業式のホームルームで担任が今年度の印象を語る時には
大騒ぎをしてほとんど聞く耳を持たない生徒たち。それが
「犯人はこのクラスにいる」と告白した瞬間静まり返り
耳を傾け出す。

それはまだまだ思考が子供で所詮中学生の彼らにとっては
まるでサスペンス映画で犯人探しをする面白さだったのだろう。
どんな風に殺され、どんな証拠があって、それから導き出す
犯人像。

まるでコナンにでもなったかのような生徒たちはこっそり
ケータイで犯人探しを始める。そして、犯人の正体がわかる。
一言も森口先生は名前を出さずAとBと言っていた犯人たち。

牛乳に仕組んだ森口先生の制裁。

Aは新学期からも学校に登校し続け、Bは精神的に追い詰め
られ引きこもりになる。

そこから生徒たちの裁きが始まる。罪の意識もなく学校に来る
Aに対しいじめという名の制裁。いじめを正当化する理由は
”人殺しのくせに平気な顔をしている”それで充分だった。
しかし、生徒たちの正義感という名の暴力はやはりいじめで
しかない。

誰かが始めたいじめを右にならえでクラス全員が同調する。
これはいじめなんかではない、正義なんだ、と歪んだ正義感。
そこでいじめに加わらない生徒がいけにえになる。

全てが森口先生の計画通りに事が運んでいく。自分は姿を
見せなくても、あるきっかけを与えればまだまだ子供の
生徒たちは予定通りの行動をし、熱血な教師は先輩教師の
言うがままに動く。

Bの家庭は崩壊しつつあった。森口先生にとって憎いのは
直接手を下したBだがその事実を告げ「かわいそうに」と
自分の息子を擁護した母親の責任は重大だった。

殺された娘は”かわいそうでなく”、殺した息子がAに
そそのかされやったのだと思い込み”かわいそう”だと
感じる。歪んだモンスターペアレンツの感情。息子は
全然悪くない。

Aの理解者となった少女。心を通わせていたはずだった
のにAにとっては”ただの暇つぶし”。それが悲劇を呼ぶ。

Aは母親の愛情を渇望していて、Bは母親の愛情が過剰。
全く逆の母親の愛情。この映画では母親がきっかけを
作っている。

Aは自意識過剰で自分はバカな同級生たちとは違うと
常に思っていた。確かに成績は優秀で発明品で表彰も
された。それを母親に認められたい。母親に自分の存在を
知ってもらいたい。同情されたい。それが殺人につながる
のはやはり子供なりの単純な思考しかなかったという事。

自分の思う通りに事は運ぶはずだったのが注目されてしま
ったのはクズだと思っていたBの方。そして母親に注目
されたいが為だけに起こす最後の行動。

純粋で清らかな心を持つ幼い子供が単純な理由で殺され、
犯人であるAもBも、いじめを正義だとバカな理由で
正当化する生徒たちも、生きている。とても憎々しい。

ある感想で「今の子供は情報社会に生きていてググって
みればすぐに大丈夫だとわかるのに」と書いてあった。

違う。それは当事者の心境になっていないからだ。もし
あのクラスの生徒だったならば例え感染が0%に近いと
書いてあったとしても絶対ではない。もしかしたら例外も
ありうるかもしれない。その例外が自分かもしれない。
それは安心できる材料ではない。大人でなく、まだ子供
なのだから理解不足にもなるだろう。

だから、森口先生に触れられ驚いたり、キスしただけで
感染すると思い込むのだろう。まだまだ子供なのだ、
中学生と言えども。それに多数の情報の中で正しい物を
チョイスする能力だってまだまだかもしれない。むしろ
恐怖関連の情報の方が受け入れやすい。それは都市伝説が
学生の間で流れるような物。

大人ならば一蹴してしまう事も小中学生では面白話として
だんだんと本当らしくなってしまうだろう。

ところで感情を表に出さない森口先生が雨の中で声をあげて
泣いたシーンは胸が苦しくなった。が、すくっと立って姿勢よく
歩き出すシーンはゾッとした。強靭で目的に向かってまだ進んで
いこうとする意思。

抑揚のない森口先生の「どっかーん」は唯一声を張った
セリフで予想していた事なのにドキッとした。そして最後の
「なーんてね」の微笑みは冷たくヒンヤリと、でも心に重く
のしかかってきた。

あの研究室への階段は死刑台の階段のようにも見え、あの
逆回転時計で見せる爆発シーンは美しく残酷だった。

原作を読んでいても衝撃的なこの映画。原作ありきの映画で
ありがちな物足りなさを一切感じず、その上原作ラスト後
まで監督の独自の観点で描かれていた。

凄い映画に出会ってしまったものだ。松さんの残酷なまでに
冷ややかな口調と表情、Bの母親役の木村さんの息子を溺愛
する母が息子に恐怖を感じる毎日の表情は恐怖映画にも見える
一瞬たりとも気のおけない緊張感のあるシーンでした。

これは観て欲しい。しかし、観る人を選ぶ映画である事も確か。
見当違いの期待、例えば”犯人探し”目的だと少しも面白く
ない映画だそうだ。どこかでそんな感想を読んだ。多分その
先にある残酷な復讐劇や堕ちていく人々、身勝手な理由など
ちっとも興味がなかったのだろう。

そんな人もいるんだ。でも、私は凄い映画だと思った。イヤな
気分になるが好きな映画でもあったから。

☆以前、「告白」を読んだ後の感想も書きました→ここ
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